レバノン、シリア、イスラエルにまたがるアラウィ―派の町Ghajar (ガジャル)に行ってきた

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イスラエル・レバノン・シリアにまたがる国境地帯に、Ghajar (ガジャル、ガジャール)という町があります。

これまでは住民と特別許可を持った人しか入れませんでしたが、2022年9月にイスラエル軍が突如として一般人の立ち入り許可を出しました。 (参考:Jerusalem Post – Ghajar: The Israeli-Lebanese town, once closed, is now open for tourists)

そんな一般開放されて間もない、謎に包まれた町に行ってきたのでレポートします。

イスラエル、レバノン、シリア結局どこの国?Ghajarの場所と歴史

Ghajarは「ガジャル」「ガジャール」と発音します。
イスラエル・レバノン・シリア3か国の国境地帯にある人口約2700人の小さな町です。

引用:The Guardian “‘Closed’ village on Lebanese-Israeli boundary welcomes visitors after 22 years”より転載

「結局どの国なの?」という感じですが、Ghajarは北と南に分かれています。

  • 北地区:レバノン領土
  • 南地区:国連の見解ではシリア領土。イスラエルが実効支配

国連が、レバノンとイスラエルを分かつ国境として、Blue Lineと呼ばれる線を2000年に引きました。
まさにその国境によって分断されているのが、このGhajarの町なのです。

同じ町なのに違う国に分かれるという、世界でもなかなか見ない、ユニークな場所になっています。
ちなみに、Ghajarはアラビア語で「ジプシー」という意味だそうです。納得の名前ですね。

そもそも、なんでこんなにややこしいことになったのか、簡単にまとめます。

  • 1932年:シリア領土となった
  • 1967年:第三次中東戦争でイスラエルが占領
  • 1978年:イスラエルが一部をレバノンに返還
  • 1982年:イスラエルがレバノン侵攻→返還し、北と南に分かれる
  • 2006年:イスラエルがレバノン侵攻
  • 2009年:北部をレバノンに返還

Ghajarはアラウィ―派のアラブ人が住む町

住民はイスラム教のアラウィ―派と呼ばれる人々です。
イスラエルだと、ここは唯一のアラウィ―派の町だそうです。
余談ですが、シリアのアサド大統領も、アラウィ―派に属しています。

  • スンニ派
  • シーア派 (アラウィ―派はこの一派)

しかも、住んでいる人は自分達のことをシリア人だと思っており、シリアのアサド大統領を指示する住民も多いようです。それなのに、イスラエルの市民権をもっています。

まとめると、「イスラム教のアラウィ―派を信じるアラブ人が住んでいて、住民は自分達をシリア人だと思っている。だけど一応イスラエル国籍も持っている」超絶ややこしいですね。

冒頭にも書きましたが、Ghajarはこれまで住民か特別許可をもらった人しか入れなかったのですが、2022年9月にイスラエル軍が突如一般人の立ち入り許可を出しました。

詳しく知りたい方向けに、動画ものせておきます。

自分が行った時も、観光バスが何台もGhajarに乗り入れていました。
イスラエルでもちょっとした観光スポットになっているようです。

レバノンが目と鼻の先

一般人も入れるようになったとはいえ、町の入り口にはイスラエル軍によるチェックポイントがありました。車は止められて、中をチェックされます。

パスポートを求められることはありませんでしたが、何しに来たのと聞かれたのでバスの運転手が観光と回答。イスラエルではおなじみのドSな質問攻めに遭うこともなく、無事に通過できました。

町は小高い丘の上にあり、周囲はだだっ広い牧草地になっています。
丘を挟んで向かいにあるのがレバノンの家々です。普通に歩いて入れてしまいそうです。

手前右側がイスラエル。左手奥がレバノン。
国境地帯に来るとおもわず嬉しくなってしまうのは私だけでしょうか。

眼下には、レバノン人の農家に飼われている牛が草を食べているのが見えます。
しばらく眺めていると、家畜の様子を見に農家の人も現れました。

定かではありませんが、地元住民によると農家に扮したヒズボラメンバーがイスラエル側の様子を伺いにきたりもするそうです。

よくみると国連の車両が止まっているのも確認できます。
おそらくPKO (国連平和維持部隊)だと思いますが、この光景を見ると中東にいることを思い出します。

Ghajarは人口約2700人の小さな町です。目立ったスポットがあるわけでもなく、レストランがちらほら点在するくらいです。住宅街をぶらぶらしていると、こんな看板に出くわしました。

ヘブライ語で「シリアのアラウィ―派のごはんを食べてみて。」と書いてあります。

犬猿の仲であるはずのシリアとイスラエルですが、イスラエル公用語のヘブライ語でシリアについて書いてあるのがなんとも不思議でした。

住宅街を抜けて町の外れに来ると、フェンスと鉄条網に出くわします。
数年前までフェンスはなく、レバノンとの行き来が自由にできたためにレバノンから武器・薬物が密輸されていたそうです。

町はとても小さいので、2-3時間あれば大体見て回れます。
白を基調とした石造りの建物が並び、青い空とのコントラストがきれいです。

建物もですが、町にゴミがほとんどないことにも驚きました。
治安良さそうな感じがします。

町の広場には、豪華な像があり撮影スポットになっています。
この像はEl-Khaderという人物で、知恵を司る預言者として広く認識されているそうです。
お金がかかってそうですね。

行ったのが昼だったからかもしれませんが、特に身の危険を感じることをありませんでした。
ツアーで来ているお年寄りや、学校帰りの子供もたくさんいて平和そのものでした。

これから行きたい方

ということで、行く前の緊張とは裏腹に、いざ行くとのどかでで少々拍子抜けしました。

とはいえ、ここでは散発的にレバノンの政治・武装組織ヒズボラとイスラエル軍の間で衝突が起きています。2023年7月にもGhajar周辺に南レバノンからのミサイルが着弾し、イスラエルが迎撃しています。

万が一があり得ることは十分頭に入れておきましょう。

Israeli artillery strikes Lebanon after anti-tank missile launch
Israel’s military says the shelling was a response to an anti-tank missile fired from south Lebanon.

Ghajarはなかなかニッチな場所ですが、一見の価値ありです。
最後に、参考までに情報を載せておきます。

  • 交通手段:車かバス
  • アクセス:ハイファから車で2時間、バスで2時間半程度(乗換えあり)
  • 観光所要時間:2-3時間
  • 宿泊施設:Ghajarにはありません。近くのKiryat Shmona, Haifa, Majdal Shamsなどの大きい町に泊まるのがベターです。
  • おすすめルート:ゴラン高原にいく予定がある方は一緒に行きやすいです

イスラエル北部の国境沿いということで、アクセスは大変ですが、歴史や中東に興味が有る方は一度は行く価値がある町です。車が借りられれば良いですが、そうでなければツアーに申し込む方が楽だと思います。

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