昨今、コロナウイルスによって、世界は大きく影響を受けました。先進国を中心に、世界でワクチン接種が行われつつあるなか、いち早く接種に動いたのがイスラエルでした。
なぜイスラエルは、この早さでワクチン接種を始められたのでしょうか?他国と何が違うのでしょうか。考察します。
また、一度は素早い動きでコロナを克服したかにみえたイスラエルも、2021年6月以降、デルタ株による感染が拡大しています。
それはなぜなのでしょうか。こちらについても今回まとめてみました。
なお、この記事は筆者の個人的見解であり、コロナに関連する情報は国や保健所などの公的機関から提供される情報に基づき各自ご判断をお願いします。
イスラエルでワクチン接種が早く実現できた理由
なぜイスラエルでワクチン接種がスムーズにできたのか?
結論、大きくこの3つだと想像しています。興味があるところを読んでみてください。
- デジタル化が進んでいるから
- 組織として意思決定のスピードが早いから
- 人口がアメリカや日本に比べてすくないから
- デジタル化が進んでいるから
- 組織として意思決定のスピードが早いから
- 人口がアメリカや日本に比べて少ないから
デジタル化が進んでいるから
これは、国民の医療情報がデジタルで管理・共有されているため、迅速にワクチンの手続きを進められたということです。
一般的には、国民の医療に関するデータは各病院、保険機関がばらばらに持っていて共有されていません。
誰がいつ何の病気になった、どの病院でどんな薬を処方された、という情報が共有されないので、まったくもって非効率なのです。
しかし、イスラエルでは日本と同じ国民皆保険(国民全員が健康保険に入れる)制度をとっています。
この保険を提供する大手の会社が4つあります。
- クラリット| Clalit
- レウミット|Leumit
- マッカビ|Maccabi
- メウヘデット|Meuhedet
この4つやその他の病院施設が、別々の機関であるにも関わらず患者の情報 (電子医療記録, Electric Medical Record)を共有する体制ができているのです。
しかも、ポイントは、少なくとも20年程度前からこういった共有ができている点です。
今回のワクチン対応も、既に存在している仕組みを有効に使ったので、ものすごい早さで実現することができたのです。
日本ではコロナが広がってからワクチンのシステム開発を行う動きが多かったように思いますが、この点はイスラエルから学べるかもしれませんね。
より詳しく知りたい方は、Forbesの記事があるので参考にしてみてください
組織として意思決定のスピードが早いから
次に、意思決定の早さをあげたいと思います。
やや抽象的な理由だと思われる方もいるかもしれませんが、大きく2つがポイントです。
国としてワクチンを取り組む合意形成ができたこと
イスラエルの政治システムについてはここでは詳しく書きませんが、少なくともわかることは「意見をまとめるスピードが早かった」ということです。
今回のような非常時には、いつまでも対策を検討している時間はありません。
ワクチン接種を行うために、素早く意見を一致させられたのは大きなポイントです。
ファイザーやモデルナから、ワクチンの供給を確保できたこと
また、ワクチンを接種したくても、実際のものがなければ始まりません。
ワクチン開発を行うファイザーやモデルナといった製薬会社から、ワクチンの供給を確保できた点も注目に値すると思います。
人口がアメリカや日本に比べて少ないから
イスラエルの人口は、日本の外務省ウェブサイトによると2021年4月時点で約934万人です。東京都の人口が約1400万人なので、かなり少ないことがわかりますね。
これに対して、アメリカは3億3,006万人と文字通りけた違いの人口です。
このため、接種率で見れば、人口の少ないイスラエルが高くなりやすい傾向があります。
とはいえ、ワクチン接種に対するイスラエルの動きが良かったことには疑いありません。
イスラエルでなぜ今感染が増えているのか
迅速なワクチン接種により、コロナを克服したかに見えたイスラエルでしたが、2021年6月以降になると再び感染者が急増しました。大きく3つの理由が考えられます。
- 新しいデルタ株が入ってきたから
- ワクチンの効果が落ちてきているから
- 行動制限の撤廃タイミングが悪かったから
それぞれ解説します。
新しいデルタ株が入ってきたから
ニュースでも報道されているように、世界各地でコロナウイルスの変異株が見つかり、脅威を増しています。
ざっとあげただけでも、アルファ・ベータ・ガンマ・デルタ・ラムダ などなど、こんなにあります。
イスラエルでは、2021年6月、中学校での集団感染を皮切りにデルタ株の感染が広がりました。
このため、既にワクチン接種を完了している人でも、新たにデルタ株に感染する人が出たため、数が広がったと想定されています。
引用元:Google News
行動制限の撤廃タイミングが悪かったから
1つ目の理由にも関連しますが、行動制限の撤廃です。
一度目の波をおさえこみ、イスラエルでは感染者が少ない状況だったため、
イスラエル政府は2021年6月1日にコロナ下の制限を撤廃しました。
人々は通常の生活に戻りましたが、先ほど書いた通り、このタイミングでデルタ株が広がってしまいました。
ワクチンの効果が落ちてきているから
ワクチンの効き目については様々な研究結果が発表されていますが、イスラエル保健省によると、ファイザーを受けた人のコロナウイルスに対する有効性が95%から64%に低下していることがわかったと発表されています。
ワクチンを受けた人の中でも、再度コロナに感染するケースや、デルタ株に感染してしまうケースが多発したと想定されます。
この状況をうけて、イスラエルでは3回目のワクチン接種が既に進んでいます。
さらに一部報道では、4回目の接種も検討されていることがニュースになりました。一体、何度ワクチンを受ければよいのでしょうか。
メリットとデメリット
ここまで、イスラエルのコロナへの対応、感染状況を見てきましたが、イスラエル (だけではありませんが)の行動には賛否両論が出ています。
そのうちいくつかを紹介します。あなたはどう思いますか。
早くコロナが終わる可能性があるので素晴らしい
コロナによって、経済は大きく影響を受けています。
当然、コロナが収束すれば経済の回復が見込めるので、経済界にとっては嬉しいことです。
ワクチンの効果・副反応が十分に明らかになっていないのではない
ワクチンを受ける私たちにとって、一番の心配です。
どんな効果・副反応があるかもよくわかり切っていない状況でワクチンを体に入れるのは、控えめに言ってもとても不安なことです。
これから時間がたつとともに、想定外の副反応が多く起こってくれば、ワクチンへの懸念が高まる可能性があります。
ワクチン接種が進まない国がある中で、ブースター接種に踏み切るのはどうなのか
世界には、まだ1度目のワクチン接種も進んでいない国が多数あります。
そんな中、イスラエルを含む3度目のワクチン接種を進める国々に対しては疑問の声が上がっています。
これに対し、イスラエル首相のナフタリ・ベネットは、自国のワクチン接種で得られる最新のデータ・知見が、世界への多大な貢献になるという旨の発言をしています。
今後の展望
未来はだれにもわかりませんが、今の状況をふまえて、起こる可能性があるシナリオをいくつか考えてみました。
こちらも、筆者の勝手な個人的見解となり、今後起こることを断定するものではありません。
この他のシナリオになる可能性がありますので、ご注意ください。
ポジティブなシナリオ
- 治療薬の開発され、コロナ自体が無力化される
- 定期的なワクチン接種があたりまえの習慣になる
- ワクチン懐疑派への対応が進み、接種率がさらに高まる
ネガティブなシナリオ
- 冬を迎えるにあたり、感染者が再び増加する
- 予想しないワクチン副反応が出てくる
- さらに強力な変異株が現れる・外国から持ち込まれる
ポジティブ・ネガティブ両方のシナリオが考えられますが、どちらも十分に可能性がある内容だと思います。
実際に、コロナ治療薬については各製薬会社が開発・試験を進めており、近い将来に実現する可能性はあります。
まとめ
イスラエルの対応の早さ、また再度感染を招いた原因については、わたしたち日本にとっても参考になると思います。
一番は、近い将来コロナが落ち着き、また自由に行き来できるようになることですね。
イスラエルの状況については引き続き注視したいと思います。それでは。